このページでは「痴漢における迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪の違い」をわかりやすく解説します。

犯罪白書の平成26年のデータによれば、迷惑防止条例違反の痴漢の検挙件数は3,439件で、電車内における強制わいせつ罪の認知件数は283件となっています。

ですから痴漢で逮捕されたとしても、強制わいせつ罪は迷惑防止条例違反の10分の1以下ということになります。

このことからも、迷惑防止条例違反より強制わいせつ罪の方がかなり悪質なイメージを受けます。

刑罰としても、迷惑防止条例違反は「6月以下の懲役または50万円以下の罰金(東京都の場合)」なのに対し、強制わいせつ罪は「6カ月以上10年以下の懲役」と罰金がなく、 有罪となれば実刑か執行猶予付きとなりかなり重くなっています。

この違いを理解することは「痴漢に強い弁護士を選ぶポイントのひとつ」となりますので、ここで痴漢における迷惑防止条例違反と強制わいせつ罪の違いを理解してください。




迷惑防止条例違反と強制わいせつの境界線

どこまでが迷惑防止条例違反で、どこからが強制わいせつという明確なボーダーラインははっきりしませんが、 電車内の痴漢の場合、下着の中に手を入れたら強制わいせつ、服の上からなら迷惑防止条例違反などと言われています。

ただし、強制わいせつ罪は「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をした」ということですので、相手の体を抑えつけてわいせつな行為をしていた場合は強制わいせつとなります。

ニュースなどを見ていても「路上で女性に後ろから抱きつき胸などを触った」電車内でも「体を抑えつけて胸やお尻などを触った」という場合は、強制わいせつ罪として報道されています。

相手に暴行も脅迫するようなこともなく、満員や電車の中で下半身を押し付けたり、お尻を触るのは迷惑防止条例違反となります。

つまり相手を抑えつける、または脅迫して(刺すぞなど脅して)わいせつ行為をしたかどうかが問題となるのです。
ですから電車内の痴漢でも下着の中に手を入れなくても何駅も長時間触り続けると強制わいせつとなることもあります。

これで痴漢における迷惑防止条例違反と強制わいせつの違いは分かったかと思いますが、では次に、迷惑防止条例違反と強制わいせつでの逮捕の違いを解説したいと思います。




迷惑防止条例違反と強制わいせつでの逮捕の違い

平成27年の検察統計統計表の「罪名別 既済となった事件の被疑者の逮捕及び逮捕後の措置別人員」によると、強制わいせつの逮捕後の措置では2,418件のうち2,288件(94.6%)が勾留されています。
一方、迷惑防止条例違反の場合は、4,717件のうち勾留は2,306件(48.9%)となっています。

つまり、強制わいせつで逮捕された場合は、長期間の勾留を覚悟しなければなりませんが、迷惑防止条例違反の場合は、勾留されずに帰ってくることも珍しくないのです。

ですから迷惑防止条例違反なら勾留されずに翌日・翌々日に帰ってくることもありますので、2・3日の欠勤で職場・学校に復帰することが可能です。
一方、強制わいせつの場合は、勾留される可能性が高く、早期に釈放してもらうには被害者との示談を成立させ、告訴を取り下げてもらう必要がありますので、 示談交渉が長引けば、それだけ会社や学校を休まなければならなく、逮捕・勾留されていることが会社や学校にばれてしまう可能性が高いです。

また勾留期間は最長20日間ですので、20日の間に示談を成立させなければ、起訴され判決がくだされます。
強制わいせつには罰金刑がないので、実刑か執行猶予付きになりますので、その後の生活が大きく左右されます。

ですから、痴漢でも強制わいせつの場合は示談解決のスピードが重要になります。
迷惑防止条例違反で勾留されなく釈放されても捜査は続いていますので、初犯でも被害者と示談しないと起訴され罰金になり前科がつく可能性が高くなります。

つまり、どちらも示談が重要な要素であるのに変わりはないですが、強制わいせつの場合は勾留されると示談成立するまでは釈放されない可能性が高く、早く釈放してほしければ示談成立のスピードが重要になるということです。

そのことを踏まえ「痴漢で逮捕された場合の刑事事件に強い弁護士」を選んでください。