他人がどう言うかは別として、自ら刑事事件専門の弁護士と名乗るのは弁護士広告のガイドラインからは好ましくないとされています。
このページでは、刑事事件専門弁護士に関して解説いたします。
刑事事件専門弁護士はいない
ネットで検索しても明確に刑事事件専門と言っている弁護士はかなり少ないはずです(ゼロではないです)。
それは弁護士会の広告ガイドラインで〇〇専門という表現は好ましくないとされているからです。
しかし弁護士会の広告ガイドラインはゆるく、地域によっては、ホームページ上で大々的に刑事事件専門といっている法律事務所がいくつかあります。
実際刑事事件専門と言っていても、弁護士には、医者のように外科、内科、皮膚科などの専門医の制度がありません。
ですから本人が刑事事件専門と言っていても実態はわからないのです。
たまたま入所した法律事務所で刑事事件をメインに担当させられているだけかもしれません。
また刑事事件のみを扱っているわけではなく、関連する民事事件も扱っていたりすることもありますので、厳密な意味で『刑事事件専門の弁護士』は存在しないのです。
その辺をマスコミはよく理解しており、事件を解説してくれる弁護士を紹介する際も「刑事事件に詳しい〇〇弁護士」「刑事事件が得意な〇〇弁護士」というような紹介をしていて、「刑事事件専門の〇〇弁護士」とは言いません。
テレビで弁護士を紹介する際に注意して観ていると面白いです。
ですから結論としまして日本には『刑事事件専門の弁護士はいない』ということです。
ただし、売り上げのほとんどが刑事事件の弁護士はいますし、ほぼ刑事事件専門の法律事務所もあります。
しかし厳密な意味で刑事専門の弁護士はいないということです。
よって刑事事件専門とホームページや広告で表現するのは好ましくないということになります。
刑事専門のホームページはOK
ネットで「刑事専門 弁護士」と検索すると多くの法律事務所が表示されるけどそれはOKなの? と疑問に思う方も多くいると思います。
その法律事務所のホームページをよく見ていただきたいのですが、刑事事件専門の法律事務所、刑事事件専門の弁護士などという表記はないはずです。
あったら弁護士会の広告ガイドラインに違反しますので、そのような表記はないはずです。
ただし『刑事事件専門のホームページ』『刑事事件専門サイト』などという表記はOKとされています。
ですから『○○法律事務所の刑事事件専門サイト』『刑事事件専門のホームページ』という表記はあるかもしれません。
さらに、事務所内で本当に刑事事件しか担当させていない弁護士がいる場合に「刑事事件専門の担当チームの○○弁護士』などという紹介文もあるかもしれません。
弁護士会の広告のガイドラインもどう解釈するかで意見が分かれることがありますが、現在の日本の弁護士の中では、実質的には刑事事件専門であっても、自ら広告媒体などを使って専門を名乗ることはないということです。
しかしネットで検索する人、夫が痴漢などで逮捕され弁護士を探している人は『刑事専門 弁護士』『痴漢専門 弁護士』などと検索する人が多く、そのようなキーワードで検索された時も上位に表示されるように各法律事務所では刑事専門サイト、などという専門分野のホームページを立ち上げているのです。
これはマーケティングのひとつの手法で問題はありません。
刑事事件は儲かる
誤解をおそれずに言えば、刑事事件の弁護は儲かります。
刑事事件には私選と国選がありますが、ここで儲かると言っているのは私選の方です。
都内の弁護士から私も「刑事事件は儲かりますか」と聞かれることがよくありますし、地方の弁護士からは「都内では刑事は儲かるんですか」と聞かれることもあります。
都内では毎日痴漢や盗撮などで何人もの人が逮捕されています。
傷害事件も数多くあります。児童買春、迷惑防止条例違反、覚せい剤事件なども毎日起こっています。
都内ですと刑事事件の加害者側の弁護士費用は60万円~100万円といったところです。
毎日逮捕される人が数多くいて、弁護士費用もそれなりに高いので刑事事件は儲かるのです。
また刑事事件は、離婚や相続とは違い、逮捕されてから刑が決まるまでの期間が短いです。
テレビなどで報道される殺人などの刑事事件は何年も裁判をしますが、刑事事件からの収入を事務所の柱としている法律事務所は、基本的に回転の速い、痴漢事件や強制わいせつ、傷害事件、薬物事件などを扱っています。
痴漢や強制わいせつ事件なら逮捕から起訴猶予までひと月以内で決まることが多いです。
覚せい剤所持でも初犯なら裁判も一回で結審しますので、数か月で解決します。
このように刑事事件は受任から解決までの期間が短いので上手く回せれば儲かるのです。
そのような理由もあり刑事事件をほぼ専門に扱っている法律事務所が都内には数多くあるのです。